書籍、アンドロイドの脳 (ISBN4-7572-1101-5) は人工知能ロボット"ルーシー"の開発に取り組んでいるスティーヴ グランドの開発日誌である。ルーシーの構想にはじまり, 体、心をどんな具合にとらえてそれを形にしたのかをスティーブ自身が書いたものだ。
本書のテーマはルーシーの開発であるが、開発にまつわる具体的な生物学や工学の話よりも、著者の考え方や社会に対する態度のほうが興味深い。第19章「悪いおこない」から引用してみよう。
脅威とは
何よりも私を不安に陥れるのは、愚かさである。私たち人間と人間に依存しているすべてのものにとって、真の脅威とは、与えられた頭脳を使わず、盲目的に大衆に従ったり、近視眼的な態度をとったりする人々なのだ。とくに脅威になるのは、無礼を承知で言うと、単純に自分の頭で考えるのが面倒だからといって、他人の主義主張を借用して自分の行動を正当化する人々だ。
—P281
言葉が無力だったり曖昧であることに関して
私はこの本が知識を与えるものでないことを切に願っている。すなわち、この本が答えを与えるのではなく、人々の心に疑問をわき起こさせるものであってほしい。私がここで差し出せるのは、私自身が苦労してつかんだ意見だけだが、それを既成事実として提示したくはない。
—P283
以上のくだりを読んで、氏は「人間とは何か?生命って何?」といったことを自分なりに理解しようとしているのだと感じた。その疑問に対する理解や考え方が間違っていないというか、ひとつの事実であることを示すために人工知能ロボット”ルーシー”を誕生させたのだ。ルーシーが何の役に立つのかといえば、それはスティーヴの疑問を解消するためだけに在る。ルーシーを通して得られた技術や理論が他者によってどのように利用されるか彼にとってはあまり重要ではないようだ(本書では直接的に言及していないか僕が読み飛ばした)。
人工知能の開発や機構について興味ある者は本書を読んで彼の考え方を受け止めてほしい。人工知能開発の現場にいる者で本書を読んだことがないのならば何か新しい知識や観点を発見する良い材料になるだろう。
Date: 2008-01-25
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