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文庫本 ドロレス・クレイボーン

スティーブン・キング /著のミステリー小説『 ドロレス・クレイボーン 』を読みました。

この本を選んだのは、数年前に 本作が原作の『黙秘』という映画 をDVDで観て、そこから原作の小説がずっと気になっていて、今回ようやく文庫本を手に入れて読んで見ようと思いました。

作品のあらすじ

この本は、ドロレス・クレイボーンという初老の女性が主役の物語です。

家政婦であったドロレスは、雇い主のヴェラを殺害した嫌疑で取り調べを受けています。

ドロレスは、事件について話すと同時に、家政婦としての自分の働きぶりやヴェラのこと、数年前に夫のジョーが死んだことについて妻として母として語りはじめます。

ドロレスは本当にヴェラを殺害したのか?

事件の真相とともにドロレスの心情がむきだしになる、サスペンス・ミステリーです。

感想

この本で最も印象に残っていることは、何と言っても全編がドロレスの一人称の語りで描かれていることです。

登場人物はドロレス以外に、雇い主であったヴェラを筆頭に、夫のジョーに娘のセリーナ、そして場面は少ないながらも取り調べをしている警察官という風に複数登場しますが、その描写はすべてドロレスの語りとして書かれています。

「いつになったら他の人物の視点が出てくるんだろう?」と、気になりながら読み進めるのですが、ドロレス以外に語る人はいませんでした。

延々と一人称が続く小説は読んだことがなかったので、かなり意表を突かれたかたちです。

当然ですが物語自体に関心がなければ読み続けることができなかったと思います。 だって、小さな村の一人の女性が仕事や家庭について語っているだけですから。おばさんの愚痴やお喋りを延々と聞いているようなものです。

しかしそこは著者スティーブン・キングの筆致であり、キング作品に共通する言葉に表せない不思議な魅力によって飽きることはありませんでした。

ドロレスの、家政婦として妻として母として女性としての姿が浮き彫りになることに、目が離せないのです。

読み進める途中で、ドロレスが犯人であっても潔白であっても事件の結末はどうでもよくて、ただただドロレスの語りに耳を傾けたくなる内容でした。

私の目に写ったドロレスは、虐げられた可愛そうな女性ではありません。日常で度々起こるであろう嫌気や不平・不満に対して立ち向かっただけの普通の女性でした。


読者のターゲットは40歳以上の既婚者や、親の働きぶりやありがたさを意識してきた20~30代の人達なのかなと思います。

少し口汚い田舎のドロレスおばさんの話を聞いてあげてください。

おわりに

著者のスティーブンキングは1990年代後半までに『シャイニング』『グリーンマイル』『ショーシャンクの空に(刑務所のリタ・ヘイワース)』『スタンド・バイ・ミー』など数々のヒット作を生んだ人気小説家です。

ドロレスを生んだスティーブン・キングも素晴らしいのは当然ですが、ドロレスの語りを日本語にした翻訳者の矢野浩三郎さんや出版社の編集者に感服です。

ドロレス・クレイボーン (文春文庫) (ISBN: 978-4167148171)
満足度(最大星5つ)

『ドロレス・クレイボーン』を原作にした映画『黙秘』もおもしろいです。

本作以外のミステリー小説や映画・ドラマ作品の感想文も書いています。 「推理小説・映画」の一覧ページ からご覧ください。

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最終更新日: 2022年10月30日(日) / カテゴリー: 推理小説・映画