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推理小説 天上の葦 上下巻

太田愛氏の 推理小説『天上の葦』 を読みました。

この本を選んだ理由は 同著者の『幻夏』 がものすごくおもしろい作品だったので別の作品も読んでみたいと思ったからです。

上下巻2冊で完結する作品です。

作品のあらすじ

この本は、興信所の所長の鑓水(やりみず)、と鑓水の興信所調査員の繁藤修司(しげとう しゅうじ)、そして鑓水の友人で刑事の相馬(そうま)の3人が探偵役の物語です。

ある日、渋谷のスクランブル交差点で老人が空に指さして絶命します。 この事件が起きた後、鑓水は磯辺(いそべ)という男から老人が「最期に指さしたことを突き止めてください。期限は2週間」との依頼を引き受けます。

同じ頃、相馬は姿を消した公安警察官の捜索を非公式に命じられ動きます。

事件にはメディア、政治、警察が絡んでいることを突き止めた鑓水たちは権力の横暴を食い止めることができるのか。 鑓水たちは過去と現在を結ぶトリック、そして国家の未来を左右する犯罪を解明します。

老人のダイイング・メッセージの謎と公安警察官失踪の背景、2つの事件を巡った重厚な社会派ミステリです。

感想

この本で一番印象に残っているのは老いた登場人物達の語りの部分です。 戦時中の事が描かれるのですが戦争史実を読んでいるようで推理小説であることを忘れてしまいます。NHKのドキュメンタリでも観ているような感覚でした。

巨悪に立ち向かう青年ならぬ老人。時代を経てでも守らねばならないこと。 若者であった当時どうしようもなかったことが現代なら何とかなると気丈に立ち向かう老人達の姿に、若い時分の志を忘れない勇気をもらった気がします。

ミステリとしては、犯罪は人が起こすものであるから人と人との関係を探っていけば事件を解明することができるストレートな刑事モノです。 もちろんその人と人とのつながりのトリックも感心するものです。 私は途中でそのつながりの予想はできたんですけど、そのつながりがわかっただけでは事件が解決しなくて、続く話の展開に引き込まれました。

変に凝った仕掛けや突発的な事故も無く、緻密なプロットの物語は、読む前から期待しただけのことはあったと思います。

上下巻あるので冗長に感じなくもないのですが、うまくシーンが切り替わって長編であることを忘れさせるヒューマンドラマに仕上がっています。 たいへん満足のいく作品でした。

おわりに

テレビドラマ『相棒』の脚本家としても知られる小説家・太田愛さんは警察ものを得意とされているのでしょうか。ここまで引き込まれる作品はなかなかありません。読み応えのある一冊です。

プロのレビューは KADOLAWA の WEB マガジン「カドブン」で公開されている特別公開の解説 や ダ・ヴィンチニュースの本作の紹介『 「今書かないと手遅れになる」 社会を根底からくつがえす最大最悪の犯罪と陰謀とは? 』をご覧になってください。

太田愛さんについては 公式サイトブログ 、さらに本作の刊行直後に雑誌で掲載されたインタビュー『 介入と忖度――『相棒』『ウルトラマン』の脚本家・太田愛さんとの対談(『世界』6月号) 』をご覧になってください。

天上の葦 上巻(ISBN: 9784041084144)
満足度(最大星5つ)

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最終更新日: 2020年12月16日(水) / カテゴリー: 推理小説・映画