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東京創元社 文庫版 大誘拐

天藤 真(てんどう しん)氏の推理小説『 大誘拐 』を読みました。

この本を選んだのは、読者が選んだおすすめ推理小説ランキング で10人中4人の人がおすすめする作品にランクインしていたからです。

作品のあらすじ

この本は、題名の通り誘拐がテーマとなった物語で、誘拐犯とその被害者が主人公の物語です。

誘拐犯は刑務所で知り合った三人組。誘拐された人物は大富豪の柳川(やながわ)家の女当主・柳川とし子(※1)。

刑期満了で出所した、戸並(となみ)、秋葉(あきば)、三宅(みやけ)の三人は、社会復帰の資本を手に入れるために誘拐団を結成し、和歌山の大富豪・柳川家の刀自(※2)を誘拐します。

誘拐団が身代金の要求や受け渡し方法に思案していると、柳川家の事情や地元の地理に詳しい刀自自身が身代金の引き渡しが成功するように色々とアドバイスをします。

刀自の助言を実行した誘拐団は見事に警察につまかることなく身代金を手に入れて、そして刀自も身柄を解放されて家に戻ることができます。

  • (※1) 登場人物欄には「柳川とし」、作中冒頭の文章では「とし子」となっており、どちらが正式名称なのか不明。物語への影響は無し。映画版は「とし子」なので「とし子」が正しいのでしょう。
  • (※2) 余談ですが、作中では柳川としのことを「刀自(とじ)」と表現されています。刀自とは女性を尊敬または親愛の気持をこめて呼ぶ称。や年老いた女。老婦人。といった意味があります。私はこの小説で初めて「刀自(とじ)」という言葉を知りました。

感想

完全犯罪が成功するトリックがこの本には書かれています。 ただし、人質の協力があったこそ成り立つものです。その点がこの作品の中心であり奇想天外な物語を生み出す仕掛けです。

誘拐犯罪でこんなミステリー作品が描けるのかと感心しました。

物語が進むうちに、話のおおまかな展開が推測できたなかで結末だけはどうなるか全然想像できませんでした。結末に至ったときはスッキリした気分です。

手品のようで、そこには種も仕掛けもあることはわかっているのに、そんな裏側のことはどうでもよくて「最後にどうなるのか?」とただただ引き込まれてしまいました。

テンポの良いコメディを見ているかのような作風で読みやすいです。

本作は 1979年 第32回 日本推理作家協会賞 長編部門 受賞作 です。この記事を書いているのが2022年なので43年も前の作品です。

1979年と聞くと、古典と呼ばれてトリックの内容や表現が古臭い印象を持つかもしれませんが、まったくそんなことはありません。 誘拐を題材にしたミステリーが記憶に無い私自身には、殺人が起きないミステリーとしてはとても目新しいものでした。

450ページ近い長編作品だったので少しずつ読んでいたら読み終わるまで1ヶ月近くかかりました。 長い時間をかけても飽きることが無く、どちらかと言えば、結末までもっと引き伸ばしてもらって長く読み続けたい不思議な小説でした。

おわりに

登場人物の容姿や舞台となっている山村がイメージしにくかったので、映画だったらもっと作品に入り込める気がしました。

映画化されていますので、映像で楽しみたい人は以下の動画配信サービスをチェックしてください。

映画は2時間です。amazon prime video は400円でレンタルできるので900円の文庫本を買うよりも安いです。本を読むよりも短い時間で作品を楽しめます。

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫) (ISBN: 4488408095)
満足度(最大星5つ)

本作以外のミステリー小説や映画・ドラマ作品の感想文も書いています。 「推理小説・映画」の一覧ページ からご覧ください。

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最終更新日: 2022年06月04日(土) / カテゴリー: 推理小説・映画