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推理小説 犯罪者 上下巻

太田愛氏の 推理小説『犯罪者』 を読みました。

この本を選んだ理由は、同著者の『 幻夏 』と『 天上の葦 』がすごくおもしろく引き込まれたミステリ作品だったので別の作品も読んでみたいと思ったからです。

上下巻2冊で完結する作品です。

作品のあらすじ

この本は、建設作業員の繁藤修司(しげとうしゅじ)、刑事の相馬(そうま)、相馬の友人で元テレビマンのフリーライター鑓水(やりみず)の3人が探偵役の物語です。

駅前で通り魔事件が発生し、被害者のなかでひとり助かったのが修司でした。 修司は搬送された病院で謎の男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と言われます。 病院を抜けて修司は自分のアパートに帰宅するが、そこでまた命を狙われ、刑事の相馬に助けられます。 そして相馬は友人である鑓水に修司を匿うよう依頼し、通り魔事件の真相を3人で調べはじめることになります。

暗殺者に追われながらも通り魔事件の裏には企業の隠蔽工作、政界との癒着、乳幼児の奇病があることを突き止めた3人は”犯罪者”を捕まえることができるのか。 10日生き延びた先にあるもの何なのか。

謎が謎を生む社会派ミステリです。

感想

この本で一番印象に残っているのは、本の題名でもある”犯罪者”が結局のところ誰なのかという点です。

4人が刺殺された通り魔事件を犯した人物はもちろん、通り魔事件のきっかけとなった真の犯罪者、犯罪を犯罪で防ごうとした佐々木邦夫(ささき くにお)という謎の人物。

この小説には警察に捕まる・捕まらないに関係なく犯罪者と呼べる人たちが複数登場するのです。 犯罪の影に暗躍者が存在するという構図は警察小説にたくさんありますが、強大な力を持った暗躍者以外にも、誰かを陥れようと画策している者が複数でてくるのはこの小説の画期的なプロットだと思いました。

本全体を通しては映像を見ているように景色や場面、登場人物の描写が圧巻で、長編作品でありながら展開もテンポよく飽きずに読み進めることができました。描く力は太田愛さんの真の凄さだと思います。 なかでも”メルトフェイス症候群”という架空の奇病が出てきますが現実にある病気だと思い込んで読んでいてインターネットで検索してみてフィクションであることをようやく知ることができたほどリアルに病気の説明がされています。

登場人物については、主人公と呼べる通り魔事件の被害者の一人である建設作業員の修司は年齢が若いこともあり不器用なところを見せながらもエネルギーが溢れています。 刑事の相馬は刑事としての規範を背景に堅物なところもありながら刑事らしさを発揮する。 フリーライターの鑓水はふわっとしていると思いきや元テレビマンのコネクションを使って器用に事件を追っていく利口な雰囲気。 3人の知性とパワーによって事件を追っていく様子は、ひとりの天才的な探偵があっと驚く推理で謎を解決するやり方とは異なる見応えがあります。

文庫版の帯に書かれた『あと10日生き延びれば助かる』という言葉は、魔の手から逃げることを想像させられます。 「生き延びることにどんな意味があるのか?」「生き延びたあとにどんなことが待ち構えているのか?」とページをめくるたびに次のことが気になって読み進めるのが止まりません。

私の推理小説コレクションの1冊に加わったことがうれしく思う作品でした。

おわりに

『犯罪者』は鑓水、相馬、修司が登場するシリーズものの第1作にあたり、第2作が『 幻夏 』、第3作が『 天上の葦 』という作品です。 Amazon のレビューも3作品すべてで星が4.5付くほど評価の高い小説です。

太田愛さんの作品 アマゾンでの評価

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ぜひ期待に胸を膨らませて読んでみてください。

私が読んだ順番は最初に『幻夏』、次に『天上の葦』、最後に『犯罪者』でしたが独立して読めるので順番はあまり関係ないです。 3作品ともに満足度は高くおすすめするとしたら『幻夏』『犯罪者』『天上の葦』の順です。

プロ文芸家のコメントやレビューもどうぞ。

犯罪者 上(ISBN: 9784041019504)
満足度(最大星5つ)

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最終更新日: 2021年02月11日(木) / カテゴリー: 推理小説・映画