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推理小説 マレー鉄道の謎

有栖川有栖氏の 推理小説『マレー鉄道の謎』 を読みました。

この本を選んだ理由は有栖川有栖さんの国名シリーズを読んでみたかったのと、同氏の推理小説『 46番目の密室 』で解説を書かれた綾辻行人氏が「 安楽椅子探偵 で不採用となったトリック」を使って書き上げられたのが『マレー鉄道の謎』と言及されていたので非常に興味を持ったからです。

本作は作家アリスシリーズあるいは火村英生シリーズと呼ばれる作品のうちのひとつです。

作品のあらすじ

この推理小説は、臨床犯罪学者の火村英生(ひむら ひでお)と推理作家の有栖川有栖(ありすがわ ありす)のコンビが主人公の物語です。

マレー半島のキャメロン ハイランドを訪れた火村とアリス(有栖川有栖の通称)は、トレーラーハウスで起きた殺人事件に遭遇します。

トレーラーハウスは内側から窓やドアがテープで目張りされており密室状態で発見されます。 この密室殺人のあと第2、第3の殺人事件が起こり、火村とアリスのコンビは日本への帰国がせまるわずかな時間で事件の解明に挑戦します。

タイトルに「鉄道」と入っているので鉄道ミステリと間違えるのですが、本書は密室を題材としたミステリ作品です。

感想

この本で一番印象に残ったのは、やはり密室の真相です。久しぶりに密室ものを読んだこともあってトリックのインパクトは傑作と言える作品だと思います。

密室で起こった第1の殺人事件と第2、第3の事件が必然としてつながるところもおもしろいです。 第2の事件では密室殺人の物的証拠が、第3の事件では犯人を示したと思われるダイイングメッセージが残されていて謎が深まっていく展開もすばらしかったです。

本書の後半はいっきに読み切るほど事件の真相が気になり過ぎてしまいました。 テープで目張りされた密室という設定が早く真相を知りたいと謎解きのシーンに引き込まれていきました。

マレーシアを舞台にしているところも異国情緒あふれるとまではいかないですけれど非日常(=フィクションの世界)を後押ししてくれる要素になっていると思いました。


登場人物のセリフはマレーシア現地の警察らが英語で話している部分と火村らが日本語で会話しているのが混じっています。 英語の会話は二重かぎ括弧で示されており、アリスは英語が堪能でないことからアリスが英語を聞き取れない部分は伏せ字にしてあって謎の多い作品となっています。

伏せ字になった部分の真相は読後もわからなかったので再読してわかるかもしれませんし、読者への挑戦としてミスリードなのかもしれません。

そして相変わらずと言って良いのか、人物描写が深くなく登場人物の関係性がわかりにくくなるのと、 殺人の動機が薄弱と思われるのも謎解きに焦点を当てた本格推理小説ならではの作品かと思います。

登場人物に感情移入しにくい点で、誰にでもおすすめする推理小説ではなく謎解きの様々なバリエーションを知りたいミステリファンにおすすめしたいマニアックな作品です。

鉄道ミステリでは無いけれどもタイトルにある「鉄道の謎」が伏線となって最後に回収されるところがミステリファンとしてにんまりする部分でしょう。

おわりに

『マレー鉄道の謎』を読み終えて、今度は別の国名シリーズ作品を読んで見たくなりました。

本書の発刊は2002年でこの感想文を書いている年から18年も前ですが、本書を楽しめたのは私が今まで似たようなトリックに出会わなかったことも幸いしています。

ちなみに本作は 2003年 第56回 日本推理作家協会賞 を受賞した作品です。

さて次はどの作品を読もうかな。

マレー鉄道の謎 (ISBN: 9784062750776)
満足度(最大星5つ)

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最終更新日: 2020年11月08日(日) / カテゴリー: 推理小説・映画