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小説『ハサミ男』の表紙

殊能将之(しゅのう まさゆき)氏の ミステリ小説『ハサミ男』 を読みました。

この本を選んだのは、 読者が選んだおすすめ推理小説ランキング で10人中5人の人がおすすめする作品にランクインしていたからです。

作品のあらすじ

この本は、死体の首に鋭利なハサミを突き立てて2人の女性を殺害した人物である「ハサミ男」と、ハサミ男の事件を捜査する刑事たちが主役の物語です。

ハサミ男は3番目のターゲットとなる女性・樽宮由紀子(たるみや ゆきこ)を調査していたところ、その樽宮由紀子が公園で死んでいるのを発見します。

死体の第一発見者となったハサミ男は、死体の首にはハサミが刺さっており、これまで自分が犯した事件と同様の手口で殺されていることを知ります。 ハサミ男は自分の手口を真似た殺人犯が誰なのかを調べます。

同時に刑事も公園で見つかった死体はハサミ男と手口が同じあると断定したことからハサミ男の事件として捜査を行います。

本物のハサミ男は偽物のハサミ男を探し出すことができたのか?そして刑事はハサミ男をつかまえることができるのか?

驚きの結末が待っている長編ミステリです。

感想

私がこの本でおもしろいと感じたのは、主役であるハサミ男が事件の容疑者であり探偵役でもあるという一人二役で展開し、さらに刑事たちがハサミ男を捕まえようとしているところです。

ハサミ男は樽宮由紀子を殺した偽のハサミ男を追いかけ、刑事は樽宮由紀子を殺したハサミ男を追いかけるという、同じ人物を異なる立場の人間が同時に調べていくのです。

本物のハサミ男は樽宮由紀子の死体の第一発見者でありますが、刑事は死体の第一発見者が本物のハサミ男であることに気づかないし疑いを持ちません。

読者である私は、刑事がいつになったらハサミ男を捕まえることができるのか、その推理や捜査の進行から目が離せないですし、同時に本物のハサミ男が偽物のハサミ男をどうやって探し出すことができるのかも大いに注目します。

自分で若干の推理を働かすためにディテールを見逃さまいと集中するので息抜きできるシーンがほとんど無く、読みだしたら止まらなかったです。

もちろん推理小説なので物語の最後はすっきりと殺人事件とハサミ男の謎が解決します。

事件の謎にはあるトリックが使われていますが精緻なトリックがとてもすばらしく満足のいく本格ミステリでした。

おわりに

名探偵役は登場しない。感動を与える人情も描かれていない。 ただただ推理小説として娯楽性を追求した作品で、映画館で映画を楽しんだように余韻が残る作品でした。

推理小説のなかでもは法廷モノであったり、ミス・マープルのような柔和なものであったりジャンルが分かれますので何が何でもおすすめできる作品とは言い切れませんが、 このハサミ男は 映画『シャッター アイランド』 が割と似ている作品かと思います。

文庫本は520ページあり長いですが、章が区切られており章ごとにハサミ男のシーンと刑事のシーンが切り替わってゆくので細切れに読んでもストレスを感じない構成で読みやすいです。

謎解きのヒントは一度読んだだけではトリックの細かい部分に気づきにくいので再読することをおすすめします。 実際私もこの感想文を書いたのは再読したあとでした。

また残念なことに作者の殊能将之氏は逝去されており本作ハサミ男のような奇抜な作品が新しく生まれてこないのが悔やまれます。

ハサミ男 (ISBN: 9784062735223)
満足度(最大星5つ)

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最終更新日: 2020年09月22日(火) / カテゴリー: 推理小説・映画