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講談社文庫 天使のナイフ 2008年08月12日 発売

薬丸 岳(やくまる がく)/著の推理小説『 天使のナイフ 』を読みました。

この本を選んだのは、読者が選んだおすすめ推理小説ランキング で10人中3人の人がおすすめする作品にランクインしていたからです。

作品のあらすじ

この本は、 桧山(ひやま)という男性が主人公の物語です。

桧山は妻を13歳の少年たちに殺されました。 少年犯罪のため加害者は罪に問われず、事件の詳細は伏せられているため、桧山は少年たちについて詳しいことを知りません。

そして、妻の死から4年後に、妻を殺めた加害者が殺される事件が起こります。 妻を殺された復讐として加害者を殺したんだろうと、桧山が疑われます。

桧山は、この事件をきっかけに、少年たちが妻を殺した理由や事件後の更生について知りたいと少年たちのことを調べ始めます。

桧山の行動の末、妻が殺された理由と加害者少年が殺された理由が明らかになります。

感想

推理小説としてかなりおもしろい部類に入る作品でした。

少年法によって加害者の情報が隠されていることがミステリー要素となり、目新しい手法でした。

少年法とは「少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続などについて定める法律」 です。

少年法では、少年のプライバシー保護や更生の促進のため、本人特定事実が公表されません。むしろ公表は禁止されています。

法律で守られて表に出てこない事実がとんでもない謎で、どんでん返しと言っても良い展開がジェットコースターに乗ったような爽快感がありました。

主人公の感情が、少年法の非情を語っているように書かれていて、少年法自体に疑問を投げかけた作品とも読み取れます。

作者は法律を厳密に調べて書かれたようですが、私は本作を推理小説として楽しんでいるので、少年犯罪や少年法についての意見や感想は特にありません。推理要素として少年犯罪を上手に扱った手腕を称賛します。

登場人物は桧山を中心にそれぞれの個性が想像しやすく描かれていて読みやすかったです。 ただ、風景の描写が少し冗長に感じたので読み飛ばした部分もありました。

題名の『天使のナイフ』という比喩表現は本作の魅力が伝わりにくいと思いました。 「天使 = 無垢な存在 = 少年」「ナイフ = 使う人次第で凶器にもなる = 犯罪」というには遠回りすぎます。 私なりにどんなタイトルが良いのか考えてみましたが『復讐』みたいなのだとネタバレに通じてしまうので、ストレートに『少年犯罪』で良いかなと思いました。

まとまらない感想文で作品の良さが全然伝わりそうにないのですが、それに反するように読み応え抜群の社会派ミステリーです。

要するに魅力を語りだすとネタバレになってしまうので怖いんです。

主人公の桧山には4歳の娘がいるので、桧山の立場が想像できる経験があれば、より一層作品にのめり込むことができると思います。

おわりに

『名探偵コナン』がファストフードとすれば、『天使のナイフ』は高級レストランのような気品があります。 そのぐらい印象深い作品でした。

表紙に「第51回江戸川乱歩賞受賞作」とありましたが、正直どんな賞なのかわかっていませんでした。 このような作品を世に出した江戸川乱歩賞ってすごいんだなって思いまして、他の 江戸川乱歩賞受賞作 も読んでみたくなりました。

2022年8月現在、新装版の文庫本が発売されていますので、この記事の冒頭に掲載した写真と装丁が違います。

天使のナイフ (講談社文庫) (ISBN: 4062761386)
満足度(最大星5つ)

本作以外のミステリー小説や映画・ドラマ作品の感想文も書いています。 「推理小説・映画」の一覧ページ からご覧ください。

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最終更新日: 2022年08月06日(土) / カテゴリー: 推理小説・映画