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文庫本 隻眼の少女

麻耶雄嵩(まや ゆたか)/著の推理小説『 隻眼の少女 』を読みました。

この本を選んだのは、Amazon のおすすめに表示されてレビューで星4つが付いていて評価が良さそうだったのと、麻耶雄嵩さんの小説を一度も読んだことがなかったのでどんな推理小説を書くのか興味があったからです。麻耶雄嵩さんについては推理小説家として名前が聞いたことがある程度でした。

作品のあらすじ

この本は、種田静馬(たねだ しずま)という大学生と御陵みかげ(みささぎ みかげ)という女性探偵が主人公の物語です。

ある事情でスガル村という村に滞在している種田静馬は少女殺人事件に巻き込まれます。 静馬は殺人の容疑を受けるのですが、御陵みかげが現れて静馬が犯人ではないことを証明して救います。

この出会いをきっかけに探偵みかげと探偵助手になった静馬は、村で起こる連続少女殺人事件を解決します。

しかし18年後に、同じ場所で同様の手口で事件が起こります。 静馬とみかげは再会し、協力して事件解決に動きます。18年前の事件と今回の事件には予想もしない真相が隠されていました。

感想

この小説は謎解きに重点を置いた本格ミステリです。

私はこの本を読む前に『 天使のナイフ 』と『 罪の声 』といった人間ドラマが強いミステリ小説を読んでいたので、本作を読むにあたって人の思いや感情を感じ取ろうとしてしまって本格ミステリの調子についていけない自分がいました。

ただ、読み進めると続きが気になりだして自分としては結構速いペースで読み終えました。

私の興味を惹きつけた理由でもあり、この作品の特徴なのが2部構成であることです。

第1部は1985年の事件で、三つ児の少女が連続で殺されて首切り死体で発見されます。さらに御陵みかげの父までも殺されてしまいます。 第2部は2003年に起こり、18年前の事件と同じ場所で少女が連続で殺される事件が起こります。 それぞれの時代で探偵のみかげが助手役の静馬を引き連れて事件を解決する構成です。

時を経て、同じ場所で同じような事件が起こることがミステリであり本作の推理要素となる部分です。

殺人事件の謎解きに加えて「なぜ2部構成なんだろう?」という2つ目の謎について答えを知りたい衝動に駆られます。


肝心の謎解きについて、2部構成なので事象の表と裏がひっくり返るような展開を期待していたのですが、期待した割には手応えがなかったのが正直な感想です。

本格ミステリとしての緻密な論理構造は問題なく、完成度の高さは間違いありません。 ただ、トリックが私には響かなかったです。

これにはアニメの世界のように現実離れした人物や舞台設定が関係しているかもしれません。

探偵のみかげの容姿の特徴は、水干(すいかん)を着ていることと左目が義眼であることですが、水干を身にまとっている意味がわからなかったです。元警察官であるみかげの父も警察官らしさが見られません。

事件の舞台となる村も異次元と言える設定です。村には、スガル様という不思議な力をもった女性がいて神様と同じような立場です。そのスガル様の力を受け継いでいるのが琴折(ことさき)家であり、殺された少女の家系です。

このスガル様の立場を最大限活かしたミステリ作品なのかと言われても疑問符が付いてしまうストーリーでした。

アニメやコミック作品だったら世界観に浸れるような気がしました。

ちなみにタイトルの隻眼(せきがん)は「片目しかない」ことを意味する単語です。

おわりに

『隻眼の少女』は 2011年 第64回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門2011年 第11回本格ミステリ大賞小説部門 を受賞した小説です。 プロの作家たちが評価された作品ですので読み応えはあります。

ちなみに文庫本は写真のように2重カバーになっている商品もありますが、イラスト版カバーの宣伝文句にネタバレにつながるようなことが書いてあるのはNGですね。

隻眼の少女 (文春文庫) (ISBN: 978-4167838461)
満足度(最大星5つ)

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最終更新日: 2022年10月15日(土) / カテゴリー: 推理小説・映画