本ページには広告・プロモーションが含まれています。

文庫本 扉は閉ざされたまま

石持 浅海(いしもち あさみ)/著の推理小説『 扉は閉ざされたまま 』を読みました。

この本を選んだのは、読者が選んだおすすめ推理小説ランキング で10人中3人の人がおすすめする作品にランクインしていたからです。

ちなみ本作は 2006年 このミステリーがすごい!2位の作品 です。

当時の1位の作品は私も好きな東野圭吾さんの『 容疑者Xの献身 』 ということもあって、もしも発売年が異なれば『扉は閉ざされたまま』が1位になっていたのではないかという意見を聞いたことがあります。そのくらい秀逸な作品です。

作品のあらすじ

この物語は、殺人犯の伏見亮輔(ふしみ りょうすけ)と、謎解き役の碓氷優佳(うすい ゆか)が主役の物語です。

大学の同窓会で7人のメンバーがペンションに集まります。

メンバーは昼食のあとに会場の掃除を済ませ、夕食の準備時間まで各自の部屋で休憩することになります。

休憩時間にメンバーの伏見亮輔(ふしみ りょうすけ)は後輩の新山和宏(にいやま かずひろ)を客室で殺害し、死体だけを部屋に残して扉が外から開かないように細工をします。

そして休憩時間が過ぎて夕食を準備する時間になっても、当然のことながら新山は自分の部屋から出てきません。 新山は疲れて眠っているとして自然に目覚めるまで放っておくように、伏見は皆を誘導します。

夕食を過ぎてもワインを楽しむ時間になっても新山は現れず、いつまでたっても部屋から出てこないことを不審に思ったのが碓氷優佳(うすい ゆか)です。

優佳はするどい観察眼で新山が部屋から出てこない理由を推理し、伏見との頭脳戦を繰り広げます。

果たして、閉ざされたままの扉は開かれるのでしょうか?!

感想

わたしがこの本を読んで、いちばん印象的だったのは、伏見が殺害現場となった新山の部屋を外から入れないように 閉ざした理由 です。

その理由というのは推理要素のひとつなのでネタバレ回避のために触れませんが、私がまったく知らなかった出来事なので「そうしたことが動機になるんだ」と感心しました。

いっぽうで、自分のこれまで生きてきた世界や価値観のなかで、今回の動機が生じる可能性があるのかと問われれば無いように思うので、人間ドラマとしては犯行動機が弱くて事件を起こすことが不自然な感じはしました。

ということで、本作は事実を論理的に積み重ねて真相にたどり着く 本格ミステリーとしての魅力が大きい です。

事件解決後の登場人物たちの結末は書かれておらず、読後は謎解きの余韻を楽しむような終わり方でしたので、こうしたプロットも本格ミステリーとして評価が得られた作品なのかなと思います。


同窓会メンバー7人のうち、主役となる伏見と優佳の2名を除くと、残りの5人は伏見の言動を支持する役割が強いです。 優佳の推理をミスリードする脇役としても存在感は弱いです。

物語の冒頭から殺人犯がわかっている倒叙ミステリーなので、どうしても犯人と探偵に注目してしまうので、周辺人物の存在が薄いのは仕方がないのかもしれません。

倒叙ミステリーについては文庫本の解説文でも触れられていましたが『古畑任三郎』や『刑事コロンボ』が有名です。私自身もこの2作品が好きな年代でして、これらと本作を比べてしまって物足りなさを感じてしまうことは否定できません。 どちらも古畑、コロンボといった個性的な主役がいます。『扉は閉ざされたまま』は刑事は登場せず、頭が切れる大学生による推理なので「素人がそこまで気づくのか?」と疑問に思わなくもないのです。


少しネガティブな感想もでましたが、本格ミステリーとしては入賞するだけの力はあるので、ミステリー好きにはぜひとも読んでもらいたいです。

未読のあなたのために「Why」を提示しておきましょう。

  • 伏見はなぜ仲間を殺したのか?
  • なぜ同窓会という機会を選んだのか?
  • そして、なぜ扉が開かないようにする必要があったのか?
  • 優佳が新山の異変、伏見の不審な態度に気づいたきっかけは何だったのか?

これを聞いただけでも読んでみたくなりませんか?

おわりに

私は小説を読む2、3年前に、 本作を原作とした同名のドラマ『扉は閉ざされたまま』 を観ていましたが、ドラマと小説との違いは気になりませんでした。ドラマの記憶は薄れていたということもありますが。。。

DVDも発売されています。

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫) (ISBN: 978-4396334062)
満足度(最大星5つ)

本作以外のミステリー小説や映画・ドラマ作品の感想文も書いています。 「推理小説・映画」の一覧ページ からご覧ください。

オススメ記事 観たい作品がありすぎる。推理・ミステリー映画を観るならU-NEXTがおすすめ


最終更新日: 2022年10月29日(土) / カテゴリー: 推理小説・映画