本ページには広告・プロモーションが含まれています。

文庫本 七回死んだ男

西澤保彦氏の推理小説『 七回死んだ男 』を読みました。

この本を選んだのは、読者が選んだおすすめ推理小説ランキング で10人中4人の人がおすすめする作品にランクインしていたからです。


作品のあらすじ

この本は、16歳高校生の久太郎(ひさたろう)という少年が探偵役の物語です。

久太郎は同じ日が何度も繰り返される「反復落し穴」と命名する現象を経験する特異な体質を持っています。 この「落し穴」に嵌ると同じ日が9回繰り返されます。「反復落し穴」はいつ始まるかわかりません。

「反復落し穴」は最後の9日目が最終決定のシナリオとなります。オリジナルの第1日目を除くと2〜8日は何をやってもリセットされます。 久太郎以外に「落し穴」を認識できる者はおらず、久太郎の行動を変えなければ他の人達の行動は前の日とまったく同じ動きで会話も同じ。そんな世界です。

そんな「落し穴」が久太郎の祖父が殺されてしまった日に始まってしまいます。 久太郎は祖父の死を回避するように1日ごとに行動を変えるのですが、何度やっても祖父の殺人事件は起きてしまいます。 なんとかして「落し穴」の最終日には解決策を見つけないといけません。

果たして久太郎が思いついた解決策はうまくいくのか。 SF本格ミステリと謳われる長編パズラー作品です。

感想

第一の謎であり本の題名となっている「七回死ぬ」というのはどういったことだろうか?

その謎は「反復落し穴」という設定が説明されることで理解が進むのですが、そこからさらに実際の殺人事件が起きて謎解きがはじまる、2度楽しめる作品でした。

同じ日が繰り返されるという設定は初体験ですし展開が全く想像できませんでした。 そもそも同じ日が繰り返されるという設定が本格ミステリとして有りなのだろうかと疑問に思ったわけですが、読み終わって、なるほどこれが謎の提示とその解決に重点を置く本格ミステリなのかと妙に納得する自分がいました。

登場人物はすべて家族や秘書でいわば身内で構成されており人物の関係は理解しやすいです。 主人公の久太郎を除いて特殊な能力を持った役柄は無く謎解きに飛躍した部分はありません。

祖父の殺害には遺産相続が絡んでおりストーリーは大人向けです。 いっぽうで小難しい情緒的なセリフやノイズになりかねない風景描写が出てこないので児童向けの小説を読んでいるような感じでとても読みやすかったです。 主人公である高校生の久太郎視点で描かれているので少年ぽさが文体に現れているのだと思います。 文庫本の装丁のようにおどろおどろしい感じはなくて軽快な作品でした。

読後は暗い映画館から日中の太陽の下に出たように長くて暗い場所から明るい場所へ飛び出したような爽快感といいますか、とにかく不思議な感じでした。

パズラーとしての感動がこの一冊にある。といったところでしょうか。 ミステリとしてのドラマチックな展開は完璧だと思います。

おわりに

この本を選んだきっかけとなった 『 読者が選んだおすすめ推理小説ランキング 』で本作は10人中4人の人がおすすめする作品でしたが、10人中4人の心しか揺さぶることができなかったと解釈すると、本格ミステリやどんでん返しを期待する作品のなかでは好き嫌いが分かれるのかもしれませんね。

異次元空間を用いた設定が本格ミステリの舞台として受け入れることが難しいと想像します。

私は『 すべてがFになる 』のような理系ミステリも好きなので舞台がSFであっても何ら問題なかったです。

ちなみに謎解きさえ楽しめればサスペンス劇場のように崖っぷちで犯人を追い詰めるドラマも好きですし、『 さんすう刑事ゼロ 』みたいな教育番組でも受け入れられます。

七回死んだ男 (ISBN: 9784062638609)
満足度(最大星5つ)

私が所有しているのは古いほうの文庫本で今は新装版が発売されています。

オススメ記事 観たい作品がありすぎる。推理・ミステリー映画を観るならU-NEXTがおすすめ


最終更新日: 2021年02月23日(火) / カテゴリー: 推理小説・映画